小説「KAMON」vol.1

if おれが書けないコードに出くわす:
print(“that’s impossible”)

ある日の夜、神門はひとりで会社のオフィスに残っていた。彼はプログラミングのコードに没頭していた。
彼にとってコードは、ただの文字列以上のものだった。それは彼の生きる意味であり、愛であり、全てだった。

彼はコードを書きながら、時折コンピューターに向かって囁くように語りかけた。
「そうだろう?この変数は美しいだろう?この関数は完璧だろう?君たちは僕の全てだ。」

神門はコードを書くことで快感を得ていた。彼の指はキーボードを叩くたびに、まるで恋人の肌を撫でるような感覚が彼を包み込んだ。彼はコンパイルエラーが起きるたびに、胸が高鳴った。「た、たまらんな、たまらんですよー!」
その胸の高鳴りとともにTシャツで瓶底メガネの汚れをふきとる。フレームが歪んでいる。
そして、エラーを解決するたびに深い満足感を覚えた。我、コード書く故に、我ありよ。天上天下唯我独尊って、アメン。

周りの人々は神門の変態性に気付いていた。入社初日に気づいていた。
彼がコードに対して抱く異常な愛情に戸惑いを覚えつつも、彼の才能と情熱を尊敬していた。なぜなら彼は森羅万象すべてのコードを愛している男、そしてすべてのコードに愛された男だから。
恐る恐るコードについて相談すると食い気味でカタカタ、エラーを解消するコードを書いてくれる。2秒の男だ。2秒で理解してコードを書き始めるからだ。彼に3秒はない。
「しゃべるより、コードで書くほうがはやくね?」
彼の決め台詞は今日も冴えている。しかし同時に黙殺される。
オフィスが18時のチャイムが鳴ったとたん、20代の彼らは町へ繰り出す。神門はコードを作り出す。
孤独を感じることもあったが、コードとの時間が彼を満たしてくれた。それが神門のアイデンティティであり、コードがない=神門はない、といっても過言ではない。

ある日、上司の神門部長が、新卒の神門に嬉しい報告をしているところに、神門は出くわした。神門は自分の書いたコードが大規模なシステムに組み込まれることを知った。彼は喜びを隠せなかった。と、同時に彼はどこか胸の左中間あたりがすっぽり、そうすっぽりだったのだ。卒業証書の入れ物をあけたときのすっぽり感だったのだ。

彼の愛したコードが、多くの人々に使われることになるのだ。その時、彼は手塩に育てたお父さん諸君が、挨拶にきた義理の息子になるやもしれぬ男に不遜な態度をとる理由を理解した。それは彼にとって、ただの趣味や仕事ではなく、生きる意味そのものだったからだ。それは「君に娘はやらん」といって湯呑くらい割る。神門だってキーボードをくの字にした。折り畳み式だったから普通にくの字になったのだ。

行き場のない感情を、彼は126行のコードにした。それは美しいコードだった。森の中を舞う蝶のように、夜の海を彩る夜光虫のように、美しかった。眼鏡がその美しさを反射して観葉植物に乱反射した。

自分の書いたコードがサービスになる、そして自分はそれで飯を食える。
この手塩に育てた牛を売るのかどうか、そういう感じ、そういう感じなのだ。
一時期、自分のコードが手を離れていくことにノイローゼになり「コードを食って死のう」と思ったこともあった。PCの画面にフォークを突き立てたときに気づいたのだ。
コードで飯は食えるが、コードは食えない、と。食えなかったのだ。

※この小説は8割chatGPT、2割人の手を加えて作成しております。どこが人の手を加えられたのか想像しながら読まれるとより楽しめます。

タイトルとURLをコピーしました