GIT昔話1 こぶとり面接
昔々あるところにGITというIT企業があったそうじゃ。
人事部長は、ある日未経験のエンジニアの応募者と面接することになった。
25歳のよしおは電車でふつうの席だったにも関わらず、おばあちゃんに席をゆずっておったそうな。
入ってきたよしおは静かな物腰で、丁寧に挨拶をした。
人事部長はよしおの顎に大きなこぶがあるのをみつけた。
「未経験ですができることを一生懸命がんばります。先輩方と協力して、一日もはやくお役に立てるようにがんばります」
彼は質問に対して正直に答え、分からないことは「それは勉強中です」と素直に認めた。
過去の失敗についても「そこから学んだことが今の私の強みです」と語った。
技術面接では彼の知識は体系的で、問題解決の考え方も筋が通っていた。
人事部長がよしおに好感をもつのと比例して、こぶは小さくなっていったそうな。
そして、よしおは無事内定をもらった。
直接会社に行き人事部長に承諾する意向を伝えたそうな。
人事部長から「どれどれそのこぶをとってあげましょう」とよしおはこぶがなくなったそうじゃ。
もう1人面接に来ることになった。
ちょうどひな祭りの日のことじゃった。
25歳たくおは電車の優先席で足を広げふんぞりかえっておったそうな。
意気揚々とした様子のたくおがが部屋にはいってきたときに、
人事部長は左顎に大きなこぶがあるのに気づいた。
「おはっす!なんでもやります!おねしゃっす!」
と彼は自信満々に語り始めた。
「できればほかの人のしりぬぐいしたくないので、個人ではいれるプロジェクトがいいっす!」
と強調するばかりだった。
話せば話すほど、たくおのこぶはどんどん大きくなった。
「あなたの強みは何ですか?」と尋ねられると、
「100%の結果を出せるっす。私のようなエンジニアはめったにいないっすよ、ひーあ!」と自慢した。
人事部長は眉をひそめながらメモを取った。
面接が終わり、たくおをエレベータに送ったとき、人事部長が驚いて絶叫した。
「こ、こ、こぶが2つになっておるっ!!」
たくおのこぶが2つになっているのに気づいたのだそうじゃ。
後日、自慢話ばかりしたたくおは不採用通知をうけとり、両こぶに涙を流したそうな。
人事部長はよしおの入社日がきまって笑顔でつぶやいた。
「ITの世界でも、謙虚さと誠実さこそが実力だ。自慢のこぶは大きくなるばかりだが、正直なこぶは自然と消えていくものだな」
それを聞いた社長は感動のあまり泣きながら人事部長に握手をもとめ、
事務所内には感動してむせび泣く者、歓喜してフォークダンスを踊るもの、
ボイスパーカッションでカントリーロードを奏でるものまで現れ、
古参のマネージャーが20年ぶりにバク転を失敗して病院へいった。
調子にのったリーダーが
「人事担当と応募者の立場も、社長と僕らの立場もあくまでこぶこぶってことで」
と放った一言で場が急激に白けた。
その日から、同社の面接では「こぶ理論」と呼ばれる評価基準が使われるようになり、
流行語大賞をとり、10年後には世界中のIT企業での面接のデファクトスタンダードとなったそうじゃ。
そして、すえながく繫栄したのじゃな。
※この物語はフィクションです